過去の、断片

（助けて…。）


…、またこの夢か。最近、よく見るな…。
きっとこれは、過去の『俺』。

今はもうない、抜け堕ちた記憶。
消し去ってしまった…『俺』の……。

「…誰か……誰でも、いいから…」

それ以上の言葉を口に出すこともできずにいつも震えていた。

「ヤだ…、もう……。」

震える手で頭を抱えて、壊れてしまわないように、自分を偽って…

「…・・いや、まだ…大丈夫。まだ、頑張れる…。」

次第に、心を殺していった。
傷を深めながら、それに気付かないフリをした。
それが、崩壊を早めていることにも気付かずに。

人に悟られない様に涙をこらえて
すでにボロボロの心を隠して、必死に笑った。笑おうとした。
しかし、神経の糸が限界まで張りつめていたのは知っていた。

現状がこれ以上続けば、本当に壊れてしまう。


「………ハハ…。」
表情の動かない固まった顔からは乾いた声しか出てこない。
悲しみはいつも絶望感に変わる。自分を偽った言葉は無気力感へと変わる。

本心は、もう頑張りたくない。堪えたくもない……。

（もう…傷つきたくなんて……）
（こんな辛いなんて……）

（ぁ……、そうか。心が動くから、傷つくんだ）
（頑張ってしまうから、余計に辛いんだ……。）


「何も感じなければ…もう、痛くないのかな…？」

気付いてしまえば、あとは縋る思いで願った。
後先なんて、考える余裕もなかった。

「心も、感情も、全て消えてくれたら……いいのに…。
…そうすれば、もう…傷つかない……。」



此処でいつも、夢は終わり私は目覚める。
きっと私は、この時に全てを忘れてしまったんだろう。